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3.【講演後の反響に対して】 1/8


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SFは何を与えているか ハードSFファンの気質 プロモーション  総   括


 SFセミナー本会企画の講演終了後には、さまざまな反響があった。大きく 3 つに分けることができる。

  1. 同日夜の「SFセミナー2001合宿企画」において執りおこなわれた、 「瀬名秀明先生のSFに対するアンビバレントな思いを聞いて」 。作家・評論家・読者を交えた活発が論議がなされたようだ(残念ながら私は出席できなかったが、後日出席者から詳細を聞く機会を得た) 。

  2. 講演および合宿企画参加者によるウェブレポートないしはウェブ日記の記述。その一部は湯川光之氏の「SFセミナー本会/合宿  関連日記リンク」 ( http://www.hi-ho.ne.jp/one7/semi2001.htm)から辿れる。

  3. プロ作家ないしはプロ評論家による、商業誌へのレポート。


 以下、これらの反響について簡単に紹介すると共に、私の感じたところを記す。

「SFセミナー2001合宿企画」は 5月 3日から翌 4日にかけて「ふたき旅館」にて開催された。 いくつかの企画がそれぞれの部屋に分かれて執りおこなわれたようである (当日のプログラムブックは「参考資料」に掲載した)。 瀬名は出席できなかったが、本会企画に参加した観客・ゲストの多くがこちらの合宿にも参加した(正確な参加人数は不明) 。

 ここではSFセミナースタッフにより「瀬名秀明先生のSFに対するアンビバレントな思いを聞いて」という企画が立案され、開催された。司会はセミナースタッフの野田令子氏(SFマガジンやSFオンラインで記事を発表している) 、ゲストはSF作家の野尻抱介氏(SFマガジン掲載作「太陽の簒奪者」で星雲賞受賞) 。

 野尻氏の「SFオンライン」レポートでは 「議題は網羅的に出た」 とあり、酒を呑みながらざっくばらんに進行したようだ。

 ジャンル論全般に関して出た印象的な発言をいくつか挙げる。

● 司会・野田令子氏:瀬名作品は科学的な知識が入っている科学ホラーであって、 (自分の判断基準による)SFではない。瀬名作品は(自分の判断基準における)SFではない作品の代表例として引用しやすい。 「科学的なものが出てくればSF」という一般のイメージに対し、 (自分の判断基準では)SFでないものとして、多くの人が知っていて説明しやすい作品ゆえに、批判対象として挙げてしまうことが多い。また科学的な解説の積み重ねからジャンプする方向性がSFとホラーでは違う。SF方向へジャンプしてくれるものと思い込んで読んでしまうので、長編の最後のほうでは本を投げつけたくなる。

● 作家・野尻抱介氏: (講演中のセンス・オブ・ワンダー論について)シャーロック・ホームズの推理に似ている。聞いているうちは筋が通っているように思えるが、後で考えてみると「あれっ?」と感じる。

● 評論家・冬樹蛉氏: 「これはSFではないと 5 年間いわない」よりも「センス・オブ・ワンダーと 5年間いわない」のほうが効果的ではないか。

● 作家・倉阪鬼一郎氏:SF・ファンタジー・ホラー・ミステリーの4つのジャンルすべてに、それぞれ必ず「センス・オブ・ワンダー」がある。ただしそれはジャンルによって色分けが変わってくる。 また、瀬名は科学的次元と物語的次元がシームレスという言葉を使ったが、シームレスという発想はSFとミステリーのものであって、ホラーとファンタジーではあり得ない。


 また、瀬名個人の考え方、行動などについての意見で印象的だったものを挙げる。

● 司会・野田令子氏:SFファンがちゃかして語っていることを大袈裟に捉えすぎでは。SFファンが軽い気持ちで「これはオレのSFじゃない」というのを重要視しすぎている。

● 同じく野田令子氏: (いまのSF作家はSFしか書いていないのでは、という指摘に対して)いまは普通の小説を書いている人がSFも書くことが多いのでは。その現状を自分から見ると、SFを書く人が普通の小説を書いているような気がする。従って、瀬名の意見には賛同できない。

● 作家・野尻抱介氏: (瀬名が提案したSFの売り方について)ベストセラー作家の発想で、中央集権的だ。もっとさまざまな方向からムーブメントが出てくるのが大事。マーケティング論は基本的に悪いことをいっているわけではないと思うが、そこに至る根拠やSFに対する考え方がSFファンと一致していない。

● 同じく野尻抱介氏:瀬名秀明はこれまでSFファンの友達が少なかったから、いわゆる一般の人から見たおたくの集団がよくわからないという感覚なのでは。



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