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4)文芸編集者インタビュー調査

【スライド 25/45】 文芸編集者にSF観を取材


それから文芸の編集者の方にいろいろお話を聞いてきました。11社26名です。直接インタビューするために僕が東京に出向いた場合もありますし、電話取材の場合もあります。非常にお忙しいのでインタビューの時間が取れず、書面による回答をお寄せ下さった方もいらっしゃいます。

【*註】集計後、さらに2社5名からご回答を頂いた。合計で12社31名。それぞれのご回答内容は、「4.文芸編集者への取材」(94ページより)に収録。(このHTML版には付属していませんので、PDFファイルを参照して下さいhttp://www.sfseminar.org/arc2001/sena/

【スライド25】文芸編集者にSF観を取材
【スライド25】文芸編集者にSF観を取材

SFに直接関わりのない文芸編集者からもSF観を聞き出したかった。
またヤングアダルト(最近はライトノベルという呼び名が主流になりつつある)の編集者からも話を伺った。
まずは面識のある文芸編集者に取材の依頼状とインタビュー内容の概要を送付。
許諾のあった方に、直接伺うか電話による取材をおこなった。ご多忙の方は書面にてご回答をくださった。
SFに直接関わっている編集者にもインタビューの依頼状を送付したが、ご多忙のため取材が叶わなかった。

25名のうち2名(祥伝社)は書面とインタビュー両方で回答してくださった。





【スライド 26/45】 インタビューに応じていただいた方々


【スライド26】インタビュー取材に応じていただいた方々
【スライド26】インタビュー取材に応じていただいた方々

匿名希望の方もいる。理由は様々で、
自分一人の意見を出版社全体の意見と勘違いして欲しくない
いまSF出版に関わっているので、あまり読者から反感を買いたくない
SFをあまり知らないのでなど。
  インタビュー取材に応じていただいた皆様はこちらです。角川書店からは、まず宍戸健司さん。角川ホラー文庫の編集長です。吉良浩一さんは僕の『八月の博物館』を担当されました。講談社の唐木厚さんは、篠田節子さんの『弥勒』や米田淳一さんの『プリンセス・プラスティック』を担当されています。祥伝社の加藤淳さんは祥伝社文庫の編集長で、400円文庫の仕掛け人でもあります。保坂智宏さんはノン・ノベルの副編集長。タクト・プランニングの深澤真紀さんは、編集プロダクションの代表取締役です。森奈津子さんの『西城秀樹のおかげです』や、伏見憲明さんの『プライベート・ゲイ・ライフ』、『SFバカ本』などを編集しています。

それから、いまヤングアダルト(最近はライトノベルという呼び名が主流らしい)が勢力を伸ばしてきているわけなんですけれども、そちらの方面からもお話を伺いたいと思って、メディアワークスに行ってきました。あとは、出版社の名前を出さないでくれという方や、匿名希望の方が数人。電話取材の方が2人。






【スライド 27/45】 書面回答に応じていただいた方々


【スライド27】書面回答に応じていただいた方々
【スライド27】書面回答に応じていただいた方々

社内でアンケートを取りまとめてくださった方もいる。

全体を通しての感想、収穫
SFは本当に売れていないのか?
まず、そもそもSFについて関心を払う編集者があまりいない。
「SFが売れない」かどうか、発行部数のデータをちゃんと把握して語れる編集者はひとりもいなかった。それどころかどの本がどのくらい売れているのか、まるで知らない。
だが「SFが売れない」という言説は多くの編集者が耳にしており、それを漫然と信じている。

角川ホラー文庫の最低ラインは2万部。徳間デュアル文庫は2〜9万部。電撃文庫は3〜20万部。角川文庫(緑・総合)の最低ラインは3〜4万部程度。最低ラインはホラーもSFもほぼ同じ。だがホラーには突出して売れる作家が一部存在するので、全体的に部数が底上げされている印象。ライトノベルのほうが最低ラインは高い。
 書面回答では、幻冬舎、祥伝社(先ほどの加藤さん、保坂さんも含まれます)、徳間書店(こちらはデュアル文庫の編集をやってらっしゃる方もいらっしゃいます)、別册文藝春秋の編集長。実は早川書房の塩澤快浩さん(SFマガジン編集長)にもインタビューをお願いしたのですが、非常にお忙しい方で、この講演の一時間前にようやく書面回答をいただきました。ありがとうございます(笑)。
 なお、今回公表するのはあくまでもその編集者個々人のご意見ですので、決して出版社や出版業界を代表するものではありません。その点をくれぐれもご注意下さい。
【*註】さらに幻冬舎4名からもメールでご回答をいただいている。

 いろいろとお話を伺って、いちばん興味深いと思ったのは、まずたいていの文芸編集者は日常の中でSFに思いを巡らす機会がほとんどないということなんですね。自分はノンジャンル指向で小説を編集している、ミステリー、ホラー、時代小説、面白い小説なら何でもやりますと主張する人も、SFは無意識のうちに仕事の範囲内から排除している。ノンジャンルの中にSF作家やSF小説は入って来ないんです。またそれ以前に、SFについて1時間話すということ自体、非常にきつい方もいらっしゃるという印象を受けました。ほとんど読んだこともないし、あまり考える機会もないから、話すことがない。特定のジャンルについて1時間も語ることができないというのは驚きでした。また一方では、あまりSFと関わりたくない、無用な緊張を避けたいということなのか、インタビューに非常に慎重な方もいらっしゃいました。





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