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【スライド2/45】瀬名秀明は何者か


 では、2枚目にいきましょう。こういうところで話をして、どのくらいの方が僕のことを知っているのかよくわからないんですが……。まず普通の講演会で話をしますと、僕の本を読んでいる人は、そうですね、200人中1人か2人くらいだと思います。だからとにかく自己紹介しないといけない。僕はこういう小説を書いていて、こういう映画になって、こういうゲームが出て……と、映画やゲームのビデオを持って行って、いちいち説明してから講演を始めるんですが、今日はそういうことはしません。

【スライド2】瀬名秀明は何者か
【スライド2】瀬名秀明は何者か

今日は私の読者の方がどのくらいの割合でいらしているのかわかりませんが、とりあえず自己紹介から始めます。今日はSFの話ですので、いつも講演でお話しするような科学の話はありません。私の他の講演を聴いたことがある方がこの会場にいらっしゃったら、今日はびっくりされるかもしれません……。

まずは自己紹介を兼ねて、SF歴を話します。

 僕は1968年の静岡生まれです。本名は「鈴木」と申しまして、「瀬名」いうのはペンネームなんですが、これは鈴木光司さんという作家がすでにいらっしゃったので、「鈴木はやめろ」という話が角川のほうからありました。「そういうときには出身地の名前を付けるのだ」といわれたので、瀬名という故郷の町の名前をつけているわけです。この前「オール讀物」で棋士の羽生善治さんと対談させていただいたんですが、そのときの編集者の方が昔「Number」という雑誌にいまして、僕がデビューした直後に電話をかけてきたことがあります。「あなたの車の描写が素晴らしい、きっとアイルトン・セナのファンに違いない」といって、セナの追悼記事を依頼してきたのですけれど、それはお断りせざるを得なかった(笑)。

 小学校時代、僕は漫画が大好きで、藤子不二雄先生のアシスタントになるのが夢だったんです。漫画家になるのが夢ではなくて、藤子不二雄先生のアシスタントになるのが夢だったわけですね。藤子不二雄A先生と藤子・F・不二雄先生、両方好きでした。手塚さんの漫画も読みましたし、テレビでは『宇宙戦艦ヤマト』とか『マジンガーZ』とかも見ていました。ホームズや江戸川乱歩の推理小説も読みました。藤子さんとか手塚さんについては、SFという感覚では読んでなかったんですが、やっぱりお二人のSF短編はいまも強く印象に残っていまして、手塚さんの『ザ・クレーター』であるとか『タイガーブックス』『ライオンブックス』とかは結構読んでいました。

 それから小学校卒業後の1年間は父親の都合で家族みんな揃ってアメリカのフィラデルフィアに行きました。そのときよく読んでいたのが「Alfred Hitchcock and the Three Investigators」シリーズですね。これは日本でも昔「ヒッチコックと3人の探偵団」というタイトルで翻訳が出ていました。確か挿し絵が永井豪さんです。そのときはとにかく読むものがなくて、このシリーズをずっと英語で読んでいました。日本から送られてくるのは「コロコロコミック」と「マンガ少年」ですね。「マンガ少年」はなぜか本屋さんが送ってくれたので読んでいました。
 帰国して中学校に入った頃、ちょうど角川文庫のSFが隆盛を極めていまして、眉村卓さんにハマりました。光瀬龍さんも読みましたね。映画の『ねらわれた学園』が中学2年生のときです。眉村さんの本は大好きで、たぶん9割5分くらいの本は読んでいると思います。僕の小説の文体は見る人が見れば眉村さんに近いと思われるんじゃないかと思うんですが、普通に書いていると眉村さんの文体になってしまうので、意識してディーン・クーンツを入れているような状況です。

 小学校高学年の頃から推理小説が大好きで、やはりエラリイ・クイーンやヴァン・ダインといったようなものを読んでいます。ハヤカワミステリ文庫や創元推理文庫を読んでいたわけです。それでそこから眉村さんと光瀬さんが好きになったものですから、中学生の頃は「もしかしたら自分はSFファンなのだろうか?」と勘違いをして……まあ別に勘違いをしているわけではないんですが(笑)、そう思ったことがあります。それでたくさんSFも読もうと思ったんですが、何かいまひとつしっくりこないと感じていた状況でした。

 中学生の頃まではアニメもよく見ていたんですが、高校時代に入ってからアニメにはあまり興味がなくなりましたね。ですから僕はガンダムとかはほとんど見ていないんですね。当時のロボットアニメはほとんど見ていない。その頃からようやく早川書房でモダンホラー・セレクションが出始めましたので、それを全部買って読みました。「HORROR MAGAZINE」という別冊はガイドブックとして役立ちましたね。それからなぜか書評が好きになって、「ミステリマガジン」と「SFマガジン」の書評は毎回必ず読んでいました。もっとも、立ち読みばかりで、ほとんど買わなかったんですが(笑)。

 小学生の頃はずっとマンガを書いていました。小学校の高学年から推理小説やSF小説を書くようになったんですけど、高校のときに受験でいったんやめてしまう。大学に合格してからサークルに入って小説書きを再開したわけです。その頃書いていたのは幻想小説っぽいものですが、やはりSFにはピンとこない状況でした。サークルの先輩は、「やはりコードウェイナー・スミスを読まなくてはならない」とか「『たったひとつの冴えたやりかた』が素晴らしい」といって、いろいろSFを貸してくれるんですけれど、面白さがいまひとつわからない。それでミステリーやホラーをよく読みました。クーンツの『ベストセラー小説の書き方』に感化されて、ノンジャンル・エンターテインメントに興味を抱いたりもしています。



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