「黄昏ホテル」で
山田正紀の相棒をつとめ、
「山田正紀ファンクラブ
(プロ限定)
会員でもある
ご存知・酔いどれ作家の
浅暮三文が探る――

作家・山田正紀の秘密とは?

■第2回:浅暮三文氏

(作家)

□秘密を盗め

――:山田正紀さんにまつわるお話を伺いたいのですが
浅暮:シゥアー! なんなりとどうぞ。
――:では、浅暮さんのいろいろ後輩の私なのでその立場から遠慮なく。まず、山田さんとはどんな形でご一緒されることが
浅暮:最近はe-NOVELSの企画のひとつである「黄昏ホテル」です。企画の頭脳が山田さんで、僕は事務作業を受け持ってます。二十人ほどの作家を同一テーマで競作させるのは、なかなか大変なはずなのですが、山田さんはどうもアンソロジーの編者という役割がお好きらしく、スムーズに進んでますよ。今後もいくつかの競作企画の柱になられる予定です。e-NOVELSの運営に関する会議が不定期にあるのですが、そんな場でも、いろいろとご指導をいただいています。
――:先日『エロチカ』(e-NOVELS,「小説現代」(講談社))の出版記念懇親会で、遅れた山田さんの代わりに乾杯の挨拶をされたとか?
浅暮:代わりというのは、ちょっとおこがましいですね。たまたま司会の貫井さんの目に付いたのが僕だった(司会の近くの席に座っていた)というだけですよ。e-NOVELSの会議に出席するメンバーはミステリー畑の方が多く、SF系は山田さんと僕に限定されてるもので、いつも山田さんのそばでちょこまかしてせいからかも知れませんが。
――:むむむ。ていうか浅暮さん、ぶっちゃけ、いったい、いつから、いつのまに、そんな山田さんとただならぬ関係に?
浅暮:こっそりと。しかしかつ計画的に、ここ一年ほどからです。実は個人的に山田さんから盗もうと思うことがありまして。なにかというのは秘密です。


□バルザック? 岡本綺堂? フィニィやギャリコ?

――:まず、聞かずもがなですが「山田正紀の小説」は好きですか? その理由は
浅暮:もちろん好きですよ。構成が上手い、アイデアがおもしろい、どんなジャンルでも書けて、質が高い、つまり山田作品に凡作なしということなのですが、これらは感想であって好きな理由とは少し違いますね。なぜ好きなのかといわれると好きだからというのが、正しい答に思えます。
――:山田正紀作品との最初の出会いは
浅暮:残念ながら作品名を思い出しません。遠い昔、今から二十年以上前、まだ大学生だった頃になにを読んだのだったか。確か当時、同じ倶楽部のギター弾きに薦められた本だったと思います。「ああ、日本にもこんなシャープな小説があるんだな」と印象に残ったことを記憶してます。
――:フェイバリット作品は
浅暮:本来ならSF作品を上げるべきところなのですが、本当に一読者として「女囮捜査官シリーズ」にしたいと思います。それと、遅ればせながらただ今、『サイコトパスを読み始めてます。先が楽しみです。つまり今読んでいる山田作品が今、一番おもしろい。山田作品に凡作なし。
――:影響を受けた作品はありますか
浅暮:これは書く立場から答えますと個々の作品の内容ではなく、構成ですね。いろいろな技術。物語の作り方。山田さんの作品を読むときは、いつもそのことを念頭に置いています。
――:山田正紀さんご本人にはじめて会ったのは
浅暮:森下先生が講師をされてたカルチャーセンターにゲストでいらっしゃったとき。
――:「空想小説ワークショップ」。私もいました、そのとき
浅暮:まだデビュウする前でしたが、そのときも質問として構成について尋ねました。丁寧にやさしくお答えを頂戴し、ありがたかったですよ。その後、僕の本に推薦文をいただいて、なにかのイベントにいらしていたときに、挨拶したのが個人として認識いただいた始まりと思います。
――:それで親しくなって、いろいろお話を
浅暮:親しくさせていだだいているというよりも、僕が山田さんのそばをちょこまかしているだけでして。というのも、いろいろ話をうかがって、役に立つことを盗み出すためですが。でも山田さんの雑談はおもしろいんですよ。カナダに暮らしていらっしゃった頃の愛犬の話なんか、傑作ですね。
――:とくに盛りあがる話題などは
浅暮:いろいろ雑談の際におもしろいことを伺うのですが、僕個人が最近ちょっとびっくりしたのは、山田さんがプレイステーション(コンピューターゲームですよね)をやっていたという話でした。僕はファミコンまででコンピューターゲームに飽きてしまったのですが、僕より一回り年上の山田さんが、ちゃんとプレイステーションをやってて、今の娯楽を体験してるんですよね。この辺りに山田さんの秘密が隠されている気がする。そうそう、ドイツの翻訳の話やDVD? ビデオ? になったのを知らなかったという話もありました。
――:同じ作家として、何か影響を受けましたか
浅暮:それを盗むつもりです。まだ掴んでいません。掴めるのかどうか、心配です。なにしろ、山田正紀ですからね。
――:浅暮さんからみて、作家・山田正紀はどういうタイプの作家でしょう?
浅暮:ううむ。難しい質問です。誰かに少し似ているかもしれないし、しかし個々の作品が類型化できるわけでもないし。作家像としては、ある意味でバルザック? はたまた現代の岡本綺堂? あるいはフィニィやギャリコ? 多面的で高品質な作家であることは確かですよね。しかし先行するテキストの脱構築がうますぎて答えられせん。


□「黄昏ホテル」へようこそ

――:先にお話に出た「黄昏ホテル」。実現の経緯は
浅暮:e-NOVELSという作家直産の小説市場みたいなウェブサイトがありまして、そこの運営会議にたまたま出席したら、いつのまにか巻き込まれてしまいまして。でもって、このサイトを維持拡大していく一環として経費捻出の必要性が出てきたんですよ。平たくいうと、なかなか儲からずに維持費用が出ない。そこで企画を立ち上げて、それを本として出版して、維持費用に充てるために、「黄昏ホテル」という競作がスタートしたんです。僕のような駆け出しから山田さん、笠井さん、皆川博子さんといった重鎮も含めて参加作家はキラ星のごとくのメンバーです。
――:ほんとスゴイ。いつか本に?
浅暮:やがて出版の予定ですので、ぜひともお手元に置いていただきたいですね。絵の方はご存じ藤原ヨウコウ画伯ですよ。
――:ますます豪華。そこへ参加することになって、最初の印象は
浅暮:なにしろ、二十に近いメンバーで、一作品それぞれが違う切り口でないと駄目でしょ。僕は事務係ですからバッターが二十人続く長いスパンの攻撃を見守るスコアラーか走塁コーチみたいなもので、ちゃんと続くののかなというのが、なにより心配でした。きっと編集者ってのは、なによりこんな心配をしてるんだなと、とてもよく分かります。
――:山田さん・浅暮さん、それぞれの担当は
浅暮:前述したように山田さんがアイデアを出す頭脳で、僕はそれを補佐する事務方です。e-NOVELSでも僕は記録係なんです。参加作家にそろそろ順番がきましたよ、いついつまでにこれだけの枚数です。過去の作品はここにありますといったメールを送信して、ファイルとして作成する。でもって、事務方では処理におえない面(作家間ではありませんが掲載にまつわる調整)がある場合は山田さんを担ぎ出して、解決してもらう。要するに書記と委員長ということですね。
――:参加作家の選定はどなたが
浅暮:選定はしてません。e-NOVELSに参加している作家に企画があるよと打診して、書きたい方を募って、手を挙げた方がメンバー。ありがたいかな、e-NOVELSに参加しているメンバーは、腕の立つ人が多いから豪華な執筆陣になったんです。
――:おお〜。実際に企画が進行するなかで、大変なこと、また楽しいことは
なにより、事務方としては最初に個々の作品に触れます。誰がなにを書いてくるか、それを最初に読めます。一番それが楽しいし、勉強になります。案ずるより産むが安しで、とりたてて大変なことはないですね。
――:では、共同編集者として、山田さんにひとこと
浅暮:いつもお世話になっております。なんとかあと二人までこぎつけましたね。次は紙にする段階に入りますので、どうぞよろしくお願いします。
――:「黄昏ホテル」、終了予定は
浅暮:あと二人で初稿段階は終了です。今後はゲラへと進み、詳しいスケジュールは決定していませんが、出版は年内に行えるはずです。SF、幻想、ミステリーのジャンルボーダーな作家が集結した「黄昏ホテル」を、ぜひお楽しみに。
――:e-NOVELS、今後の企画など
浅暮:ふふふ。いろいろと目白押しです。本格推理、SFの企画……。個々の詳細はネットのe-NOVELSサイトにて随時、告知されていくでしょう。
――:いま教えて下さいよう
浅暮:どうか我らがサイトをブックマークに加えて、こまめに覗きにきてくださいね。


□その男No.13「贋作ゲーム」

――:また、浅暮さんは「山田正紀ファンクラブ(プロ限定)」会員ですね。結成のきっかけは、当時の「SF-Japan」編集長・大野氏の発案で、単に「神狩り2」特集号の企画だったそうですが
浅暮:詳しい経緯は知りません。田中啓文さんが会長であり、いいだしっぺのはずです。
――:しかし「SF-Japan」vol.4の「ファンクラブ結成式」座談会記事を見ると、田中啓文さんは会員番号No.3ですよ?
浅暮:僕の所へ連絡があったのは、すでに企画が決定してからで、なにからそのような展開になったのかは情報を入手してません。……でも、今までなかったのも不思議な会に思いませんか。この会ができるというのを一番、信用していなかったのはご本人と伺っておりますが。
――:さもありなん。ところで、ファンクラブ会員証は、会員ナンバーにあわせて山田正紀の作品名が出版順に割りあてられてるとか
浅暮:僕はNo.13で「贋作ゲーム」がカードに印刷されてます。このカードは岩郷重力さんがデザインしたレアもので、山田一門と一文が添えられてます。へへへ、いいでしょ? なに? 持ってない? 残念ねえ……。でも僕のはあげないもんね。
――:いいな〜。ちなみに、ファンクラブ員としては実際どんな活動を?
浅暮:主に出版社のパーティーがあれば、メンバーの何人かがわさわさと立食しつつ、山田さんのそばで馬鹿な話をしております。現在の活動はそれがメインのはずです。僕がのけ者にされてなければですが。
――:あの、拗ねないで
浅暮:確か会の規約には、毎年一回山田作品のみを対象にした「山田正紀プロ作家限定ファンクラブ大賞」を決定するはずなのですが、どうなってるんでしょう。僕としては昨年は「風水火奈子の冒険」に投票する予定だったのですけど。その辺り、他のメンバーに聞きたいですね。
――:じゃあ、今後の活動予定も
浅暮:分かりません。なにかしてほしいです。
――:ええと、そのファンクラブ会則の草案が、例の「SF-Japan」vol.4にあります。事務局は「SF-Japan」編集部内に置く、とあるので現担当編集の加地さんがご存知なのでは?
浅暮:ぜひ、徳間書店に葉書を書いて、せっついてください。
――:ところで、この会則の草案は田中啓文さん作ですね――あれっ? あのここに、会長の選出は「会員を姓のあいうえお順で並べたときの一番目を会長、二番めを副会長とする」とありますが……。気のせい?
浅暮:んん?
――:まいっか。ともかくファンクラブ会員として、山田さんにひとこと
浅暮:『SAKURA』の続きが読みたい! 『神狩り2』が読みたい! 「トラベルミステリー」の続きが読みたい! 読みたいったら、読みたいんだもん!


□すでに山田正紀がやっていた

――:今後の山田正紀作品に、期待したいことは
浅暮:なにより、まだ今までにお書きになってないジャンルの小説が読んでみたいです。山田正紀の新機軸。それがなにで、どう書いてあるのか、それを期待したいです。なにを選び、どう書くか、それを知ることこそ山田作品を読む最高の楽しみ。
――:では、山田正紀のココがすごい!をひとことで
浅暮:「それはすでに山田正紀がやっていた」となにを書いても、そういわれる気がしてしまうんですよ。立つ瀬がないです、プロとしては。
――:浅暮さん、ご自身の今後の予定は
浅暮:六月に東京創元社から釣りと泥棒と温泉がモチーフのクライム・コメディ『ラストホープ』、九月に光文社から『嘘猫』という自伝エッセイ? 私小説? 一言で形態が説明できない作品を予定。その後、大物にかかります。間隙を縫ってSFセミナーに顔を出しますから、会場で販売している最新刊『針』(ハヤカワJコレクション・早川書房)をまだお持ちでない方は、どうぞよろしくお願いします。合宿もいきまっせ。
――:どうも、お待ちしてます! でも、あの、また合宿で酔っ払ったり? 我々スタッフは毎年毎年、それはもう……
浅暮:ええと、ははあ、そんなこともありましたかね。この頃、老眼になったし、年を取ると、記憶の方がとんと……。
――:ダメだ、今年も覚悟だ、みんな(涙)。ご協力ありがとうございました
2004.4.25 メール取材にて)

取材・構成/尾山ノルマ(SFセミナースタッフ)





■浅暮三文氏プロフィール■
あさぐれ・みつふみ 1959年兵庫県生まれ。作家。大学卒業後、広告代理店に勤務。広告関係の受賞は十数回。98年『ダブ(エ)ストン街道』でメフィスト賞を受賞、デビュー。02年『石の中の蜘蛛』(集英社)で日本推理作家協会賞受賞。著書に『カニスの血を嗣ぐ』『左目を忘れた男』(講談社)、『夜聖の少年』『10センチの空』(徳間書店)など。
浅暮三文情報サイト「GURE GROOVE」
http://asagure.fc2web.com/index.html