コマ数は昼5,夜16。過去最多だったかもしれません。
野田さんの講演「宇宙を空想してきた人々」ではクラシックアートの OHP による映写を行ない,合宿では実際の本に触れることもできました。急遽,小規模ながら『「科學小説」神髄』のサイン会も行なわれました。
また「オンラインSF出版の現在」では PHS によりインターネット接続を実際に行ない,ビデオプロジェクタに映写を行ないました(接続環境はフジオンラインシステム様,ビデオプロジェクタ手配はアトリエサード様にご協力いただきました。ここに記して感謝申し上げます)。
今年は例年より配布物も多く,野田さんのNHK人間大学の企画書(講座概要)とアンケート,星敬さんによる国内オリジナルSFアンソロジー・リスト,オールタイムベスト投票用紙・参考リスト,電子書店パピレスやSFオンラインの販促チラシと盛りだくさん。
というわけで,今年は「来て,見て,さわってSFセミナー」というか(笑),ネット時代にも意味のあるコンベンションにできたのではないかと思っています。今年も定員いっぱいの大盛況でした。ご出演の先生方、ご来場の皆様方のご支援に深く感謝申し上げます。
宇宙を空想してきた人々
牧真司さん 野田昌宏さん
オンラインSF出版の現在
阿部毅さん 福井智樹さん 坂口哲也さん
SFと優生学
中村融さん 長山靖生さん
オリジナル・アンソロジーの可能性
井上雅彦さん 日下三蔵さん 星敬さん
大山さんから,触れられなかったペレストロイカ以後の映画についての補足をいただきましたので以下に転載します。
SF映画については、ペレストロイカの時代に埋もれていた名作が発掘されることはありませんでしたけれど、過去の作品の再評価(例えば、『両棲人間』(1961))もあり、また、周辺領域で興味深い作品が現れました。カレン・シャフナザーロフの『ゼロ・シティ』(1990)は閉塞感漂う不思議な映像で、ゲオルギイ・ダネーリアの『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)のとぼけた(そして少々屈折した)笑い、アレクサンドル・ソクーロフがストルガツキイ兄弟の原作を大胆に翻案した『陽日はしづかに発酵し……』(1988)、同じくストルガツキイ原作の西ドイツ(当時)との合作『惑星アルカナル』(1990)(原作は『神様はつらい』)等がこの時期に作られています。
作品としてのできはよくありませんが、ソ連邦初の人類破滅映画『死者からの手紙』(1986)もこの時期の作品です。この作品の監督、ロプシャンスキイは、タルコフスキイの助監督?をやったこともあるそうで、如何にもタルコフスキイの悪影響(^^;を受けた映像を見せてくれます。ロプシャンスキイがその後監督した『ミュージアム・ビジター』は、カタストロフ後の奇形人間と白痴のあふれる世界を舞台にしたカルト調の映画です。
ソ連邦崩壊後は、残念ながら、この種の映画に特筆すべき作品は見られないようです。例に上げたペレストロイカ期の作品を見ると、技術的には素朴であっても、けっこう手間ひまかけて、ていねいに作られていることがわかります。今、このような作り方をすることはおそらく不可能でしょう。光学合成を多用した特撮でハリウッド映画に対抗することは技術的にも、そもそも、資本的に不可能なことも明らか。となれば、当分の間、ロシアSF映画は冬の時代を迎えているのかもしれませんが、そのうち低予算でも一味違った作品が出てくるのでは、と少しだけ期待しています。
ちなみに、最近の映画雑誌に紹介されたSF的作品を調べると、アレクサンドル・ベリャーエフ原作の空を飛ぶことのできる少年を描いた『アリエリ』、文豪ミハイル・ブルガーコフの中編の映画化『運命の卵』、1912年(革命前)のロシアを舞台に、宇宙からの来訪者と関係あるらしい危険なゾーン「悪魔の輪」をめぐる冒険映画『第五の大洋の岸部に向って』等があります。これらを筆者はいずれも未見ですが、何かわかるようでしたら機会をとらえて紹介したいと考えています。
また大野さんには,夏の日本SF大会 Capricon 1 内のSFセミナー企画で再度,最新ロシア・ファンタスティカ講座をお願いする予定です。どうぞお楽しみに。
(文・浜田玲)